2015年8月1日土曜日

『落語レコード八十年史』下巻(都家歌六 著、1987)


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『落語レコード八十年史』は1987年刊の、大変、
ぶ厚い本です。上下巻セットで7000円~。

実はおススメしたいのが、
落語レコード速記が収録された下巻の方で、
そちらが気に入られた方は、上巻(落語レコードの歴史本)も
手に取ってみてはいかがでしょうか。

興味のある方は図書館で一度探してみて下さい。


『落語レコード八十年史』(下巻)は、
レコードや落語家事典と
「合わせて読みたい」希少な一冊です。


同書下巻の構成は、
・「噺家列伝、文句集、ディスコグラフィー」
・「寄席の色物」
・「あとがきに代えて」
・「索引」
になります。


私が主に読んだのは「噺家列伝~」。
はじめは上方の噺家のページを読んでいたのですが、
どうも新鮮味に欠ける内容で
(※ディスコグラフィーは大変貴重なデータです)
今やネット上で知り得る情報が殆どでした。

おススメしたいのは、
東京の噺家のページです。
筆者が実際に目にした明治生まれの噺家の横顔を
くっきりと描いています。
彼らの意外な一面を知ることが出来ました。

上方落語を中心に聴いていると、
東京の噺家さんの横顔は中々知ることが出来ません。
本を読んでいても、
「あの人は名人だ」とか、
「上方の噺を東京へ持って行って見事に練り上げた人」
という褒め言葉しか並んでいなかったのです。

博打に凝って人望を失った人とか、
晩年、不遇だった人など、
筆者は時に鋭く、また愛情をこめて書いています。


名人でもレコードを多く残さなかった人、
レコードを多く残したが、現代は全く評価されていない人、
全盛期を過ぎた頃のレコードなどなど、
噺家とレコード、両方に精通していなければ
書けない内容ばかりです。


私が心を動かされたのは、
今や日の目を見なくなった、
またなりつつある昔の噺家さんを、
レコードによって、すくい上げ、本にしたということです。
誰からも忘れ去られる前に、
亡くなった名人の面影を書きとどめる。
本当に大変な作業だったと思います。


噺家列伝については、私は口を挟む知識を持っていません。
ただ文句集(速記)には、
いくつか聴き間違いによる誤記がありました。
(特に初代桂枝雀の「芋の地獄」)

あとがきで、本書が後世の研究の叩き台になれば、
と書かれています。
落語レコードに興味のある方は、
是非、この本を手に取って
文句集(速記)などが正しく記されているか
見て下さい。


大変くやしいですが、
上方の噺家の文句集(速記)より、
東京の噺家の方で、たくさん笑ってしまいました。

三代目三遊亭円馬の「六尺棒」(P178)
親子ゲンカ、ほのぼのとした読後感。
親を子を互いに思う気持ち、
その台詞がさり気に入ってます。

四代目柳家小さん「かぼちゃ売り」(P116)
与太郎で初めて笑いました。
「ウハッ、南瓜よりじゃが芋に似てぇら」
「何をいってやがんだ畜生奴、殴るぞ」
「あ、そうかい、いくつ殴る。さア殴ってくれ」
「オイオイオイオイ、頭もって来ちゃいけねえよ。困るなァ」

初代・柳家権太楼「猫と金魚」(P210)
「これ心臓のかけらです」
「何をいってンだい。そりゃ金魚だ」

三代目春風亭 柳好「藪入り」(P225)
まさかサゲで泣かされるとは。


また明治~大正期の諸相が
よくあらわれている新作落語も面白かったです。

「ボロタク」(二代目三遊亭円歌・P246)
は「反対俥」の改作だそうですが、
とても新鮮な内容でした。
映画「TAXi」の監督が読んだら吃驚しそう。

「拳闘幇間」(鈴々舎馬風・P254)は、
「たいこ腹」の改作。
幇間の一八を相手にボクシングをしようとする
若旦那の噺です。

米朝さんの師匠・正岡容の新作落語もいくつか
読むことが出来ます。
「チップ一万両」
カフェーで働く女給さんの笑顔見たさに…。

五代目古今亭志ん生の「算術」。
無学の店子(長屋に住む人々)に
そろばんを教えようとする家主さん。
ドンドン話がそれていって、という噺。

志ん生の落語全集は、
興味のある噺だけ、パラパラと読んだくらいなのですが、
「算術」が一番好きな噺になりました。

(※同書に収録された演題の一覧は、
「はなしの名どころ」(HP)の「レコード文句集」ページ
ず~っとスクロールしたところにあります。)


『落語レコード八十年史』(下巻)は、
新しい発見と出会える一冊です。
明治生まれの噺家の横顔と、
レコードに埋もれた噺を読むことが出来る、
大変貴重な落語本と言えるでしょう。



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