2015年5月8日金曜日

四世 桂 米團治 寄席随筆(岩波書店、2007)



米朝さんの師匠・四代目桂米團治の文章は、まさにふぐの毒!
″当たる″とビリビリしびれます。


・ハードカバー裏には米團治の描いたユニークなイラストが
載っています。

・資料写真多数あり。

・米朝さんの「まえがき」一部を抜粋すると、
「珠玉の文章が収録されています」



●第一章「近世落語家伝」。
明治~大正期に活躍した落語家について、
愛情をこめつつ読みやすくまとめられています。

六代目林家正楽、初代桂枝太郎、初代桂枝雀、三代目桂文團治、七代目桂文治、初代桂文我、三代目桂万光と二代目桂小文枝、二代目三遊亭圓馬、犠牲―四代目桂文吾、畸人 桂仁鶴、べちょたれ雑炊。

それぞれ『上方はなし』(昭和11年~同15年)という雑誌に
寄稿された文章ですので、
読み物としても面白く読める内容だと思います。



●第二章「漫画漫文 「おやじ」よ恕せ」
入門の巻、見習の巻、前座の巻、泣かすの巻、益々泣かすの巻。

おやじというのは、師匠・三代目米團治のこと。
四代目米團治の若かりし頃のエピソードを知ることが出来ます。
自伝エッセイっぽい。
 こちらも『上方はなし』に寄稿された文章です。



●第三章「琦流庵漫筆」
同じく『上方はなし』に寄稿された文章です。

真の落語、真の落語(承前)、噺の味、再び「噺の味」に就て、琦流庵漫筆、琦流庵漫筆―ああ薬湯は飽くまで祟る、鵺の悩み、わたしゃ売られて往くわいナ、漫画漫文 ふぇ。いへん、流行歌を排す、昔の道頓堀。

ふぇ。いへん って一体…。


●第四章「殺された龍馬(りゅうば)」

一、木曽の宿
二、浮気の虫
三、濡れ仏
『上方はなし』第三十集 編輯後記

→米團治の書いた小説です。
途中で書くのを止めた話だと何となく知っていたので、
最近まで読んでいなかったのですが、
切りの良い所で終わっていて、中々読みごたえがありました。
 主人公は怪談師です。


●第五章「落語梗概」―落語の落ちを主とした作品短評


●第六章「凡想録」
戦時中にこっそり(?)書いていた日記です。


●第七章「戦後の随筆」
三分の理、天王寺の売り物と見せ物、本当の″たちきれ″、『たちぎれ』について―落語研究家・渡辺均 宛ての書簡、上方落語の研究―私の体験から割り出した芸道、上方落語の略史。


●第八章「桂米團治についての随筆」
米團治にまつわる人々が彼について書いた文章です。

・米團治話術に望む……正岡 容
・師、四代目桂米團治のこと……桂 米之助
・ずっとわが師……和多田 勝
・米團治の解釈……和多田 勝
・猫の災難―亡師を偲ぶ……桂 米朝


●第九章「上方落語台本」
落語速記+米團治の端書付き。

・落語稽古本 つる
・上方人情噺 弱法師(ながたん息子改題)
・代書
・らくだ
・百年目
・三枚起請
・菊江仏壇

『上方はなし』に載った速記に、
後年、米團治が手を加えた内容のものも収録されています。
 五代目松鶴より後の世代の速記であり、
米朝さんより前の世代の速記もあります。


●第十章「四世 桂米團治 年譜」

●あとがき 桂米朝

●初出一覧


編集協力 豊田 善敬 戸田 学
装幀 宇野 泰行



どのページを開いても面白い、
素敵な本です。


印象に残った言葉を抜粋します。

「(略)我々は奇蹟を望んだなれば必ず失敗しなければなるまい。(後略)」
(昭和十五年八月二十一日)
P164 「第六章 凡想録」より


「(略)真の落語は、落語家自身が具(つぶ)さに世の辛酸を嘗めた自己の体験によって、適宜に題材を消化して語るべきものである。されば落語は即座に人生の縮図となって、その一言一句に聴者の胸を打つ力が生じる。(後略)」

P214 『上方はなし』第十一集より


……なるまい、とか、されば、とか、
今では中々使えない言葉ですよね。
いやそれ以上に実のあるお言葉なんですが。

 よく考えたら、別に落語に限った話ではないと思います。
真の落語は~を「真の映画は~」と言っても良いし、
(その時は「映画監督が具(つぶ)さに世の辛酸を~」と続く)
小説に置き換えても良いですよね。


四代目米團治は哲学者だなあと思いました。


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