2015年4月7日火曜日

『桂 米朝 私の履歴書』(日本経済新聞社、2002年)


新聞に連載された米朝さんの自伝です。
全36編が収録されており、
一編一編が短く、とても読みやすい。
その上、切れ味鋭い文章にしびれます。





本の冒頭にある「前口上」には、
「事実、頭もボケかかっており、今の私には原稿を書くというのは難行苦行です。…(略)(本を出すのは)おそらくこれが最後になるでしょう。」とあります。


私はこの本を読むのが二回目で、
初めて「前口上」を読んだ時は、
「米朝さんも冗談好きやなあ」と、
本気にしませんでした。
今から思えば本心を書かれたのだと思います。



個人的に文句無しに面白い、と思うのは
第一章「入門まで」
第二章「落語漬けの日々」。


第一章は、米朝さんの故郷、姫路のことや、中国大連の様子、
戦争体験などが綴られます。
徴兵されて、病気にかかり、
入院生活が長かったため、
「私には軍隊の話をする資格はない」
という言葉を綴られていて、
ご自身を責めているようで切なくなりました。


第二章の「落語漬けの日々」は、
駆け出しの若手噺家だった頃のお話。
この章の途中で、師・四代目桂米團治が亡くなります。
亡くなった原因を読むと本当に悲しいのですが、
それにしても、
若くて貧乏だった時代の話って、
どうしてこんなに面白いのでしょうか。


さて、
第三章「充実の時代へ」
第四章「人間国宝」は
成功されていく米朝さんご自身の姿が描かれます。
何だかとても遠い人のように思えました。
本当はこの時代もご苦労されたことが
少なからずあったと思うのですが、
それよりも大事な落語や芸能文化のことを優先されて
書かれたのだと思います。

追記:亡くなったお弟子さんの話も有り。


本書の最後に、
国立民族学博物館長の石毛 直道さんと
米朝さんの対談が収録されています。
中国の笑芸・講談について語られている所が
印象的でした。



この本を改めて読むまで、
米朝さんが、どれだけ多くの落語を手掛けたのか、
どれだけ多くの上方文化人と交流があったのか、
漠然と知ってはいるつもりでした。

今回、それが具体的にはっきり理解できて
良かったように思います。

個人的に、意外に思ったのは、
米朝さんのラジオで、リスナー参加型のさきがけとも
いえる企画が始まった、ということでした。
テレビ・ラジオ史にも名前を残す人なんですね。


メモ:米朝さんのネタ一覧(内訳つき)を作りたいです。
この本、落語のネタに対する思いや姿勢も多く語られています。



私は未読ですが、文庫本も出ています。


★おすすめリンク

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